2013年10月 夢見るバンブー:竹破砕機のパウダー作り

2013年10月。ぽそぽそと雨の降る中、上子島の古民家にバンブーミルの機械が導入された。バンブーミルとはその名のとおり、竹を破砕する機械のこと。竹には強い発酵力や殺菌力があり、その力を活用しやすくするため、細かいパウダーにする機械である。

アカミラプロジェクトはその名のとおり、ぼくたちの「明るい未来」を作るためのプロジェクトであり、場所を高取に限ったものではないが、ここ高取でアカミラプロジェクトを行うシンボリックな意味がこの「竹」なのである。日本各地に竹取物語の伝承地とされる場所はあるが、ここ高取も、高取=竹取とする説のある竹取物語の伝承地である。その高取=竹取で、竹を使って集落の再生を試みることに、ぼくたちは意味を見いだしている。

高取上子島にも、手入れが行き届かず放置された竹林がある。こうした里の放置された竹林は全国的な問題である。かつて日本人は、竹とゆかりの深い生活を送っていたと聞く。竹取物語が日本人になじみの深い物語であるように、成長が早く、軽くて丈夫な竹は、竹かごやざる、はし、調理器具など、生活のさまざまな道具に活用された。しかし、かつて日本人の生活をさまざまに彩った竹製品も、いまはプラスチックや金属に取って代わられているのが現状だ。クラフトなどで、手作りされた竹製品をもういちど生活に取り入れて行こうという流れはあるが、それも一部の好事家の動きにすぎない。竹が日本人の生活から消え去りつつあるのが現状だ。

アカミラプロジェクトで導入を決めたのは「バンブーミル」という、姫路の製作所の作る機械である。類似品もあるなかで、より粒子の細かいパウダーが出来ることから導入を決めた。この機械を使って竹パウダーを作り、販売にもつなげて行きたいというのが目論見である。上子島の老人会の方にも手伝ってもらって、幾ばくか還元できれば、という思いもある。作業自体は軽作業なので、高齢の方や女性でも作業は可能だ。バンブーミルの原理は単純で、要するに巨大な鉛筆削り。削り口にセットすれば、ごうんごうんと先を削って、後ろから押し込んでくれる仕組みだ。刈ってきた竹があれば、いまからでも竹パウダー作りがはじめられる。パウダーを1ヶ月ほど発酵させれば、すぐに使える竹パウダーが完成する。もとの竹は、近くの竹林から切って来てもかまわないし、同じ奈良県在住の竹アーティスト、三橋玄(みつはし・げん)さんが切り出して来てくれることも決まっているので、あとは竹パウダーの機械を設置すればいいというところまで、準備は整っていた。

設置の当日、はるばる姫路から、竹破砕機がトラックに乗って到着した。あいにく古民家の入り口は寄りつきが悪く、段差もあったので、重い本体を運び込むのにずいぶん苦労をしてしまった。足組をしっかりしないまま段差を乗り越えようとしたら引っかかって乗り越えられず、一度引き返して、もう一度乗り越えたり、苦労しつつもなんとか設置部屋まで運び込んだ。竹パウダーの機械を置くのは、門を入ってすぐ右手の部屋。その昔は馬小屋として使われていた部屋で、竹パウダーの機械を置くために、改修を行っていた。今後はこの部屋をベースに、販売用の竹パウダーを生産する予定なのだ。本体を運び込んで、機械をだいたい組み立てたところで午前中の作業終了。昼食休憩をはさんで、午後から試運転をすることに。ところが、試運転に使える竹の用意がなかったため、急遽近所の竹林まで竹を切りに行くことに。竹を切りながら教わったのは、竹パウダーに使う竹は、一年目の若々しい竹より、生えて二、三年の竹を使う方が良いということ。若い竹は水分が多いので、二、三年目くらいの乾いた竹の方が良いそうだ。表面がしらっぽかったり、根元に皮がついているのは、筍から大きくなったばかりの若い竹だ。全体に色の落ち着いた、節が黒ずんだのが古い竹だという。実際には切り出してから1週間ほど乾かしたものを使う。ブルーシートなどかけておけば1ヶ月ほど大丈夫だ。ただし、カラカラに乾燥したものは駄目で、青い色が残っていないと発酵力が落ちるので使えない。

竹林で切った青竹を担いで帰り、さっそく試運転を開始する。動き始めたバンブーミルは、キイイイインとかなりの騒音だ。竹を削り始めるといっそう音が高くなって耳を貫く。機械の長さに合わせて、一回に送り込める竹の長さは3メートルほど。人の手で若干調整しながら、竹を送り込んで行く。太さ・長さによっても代わるが、削り終わるまで数十分ほど。1本分削り終わるまで1時間ほどかかるだろうか。削り終わったパウダーは、容器に入れて発酵させる。発酵が完了すれば竹パウダーのできあがり。ここまでひととおりレクチャーを受けて試運転は終了。特に問題もなく機械の設置は完了した。ただ、運転させるとかなりの騒音なので、窓枠にゴムをつけたり、防音対策をしてから動かすことになる。

竹は科でいうとイネ科に分類される単子葉植物である。笹と仲間で、背が高く太いのが竹、背が低く細いのが笹というように理解しているが、明確な区別はないそうだ。東部アジアの温帯〜モンスーン地帯に広く分布し、ヨーロッパやアメリカ大陸にはあまり見られない。日本に分布する主な竹としては、マダケ、モウソウチク、メダケ、ナリヒラダケなどが挙げられる。普通地下茎で増え、竹林はおおよそひとつの〈株〉である。ほとんど花は咲かないが、マダケでは100年に一度ほど花が咲くとされ、花が咲くと枯れ死にする不思議な植物である。 竹に限らずイネ科の植物は「異世界から来たような」驚異的なパワーを持つものが多い。月から来たかぐや姫が竹から生まれたのはあながち竹のパワーと無関係とは思えない。「雨後の筍」ということわざからも分かるように、驚異的な成長力を持ち、時に一日で1メートルを超えて成長することもある。また、強い殺菌作用、発酵作用を持ち、そのパワーは竹パウダーにした状態で存分に発揮されるのだ。

竹は多孔質といって、繊維にたくさんの穴が空いた状態になっている。また、水を吸い上げる力が強く、その力で土中の細菌類が吸い上げられて、この穴に棲み着くのだという。そのため竹には、土壌菌が豊富に含まれ、なかでも植物性の乳酸菌が豊富。パウダーにした竹を嫌気状態(空気を遮断した状態)にすると、乳酸菌が発酵する。乳酸菌には、抗アレルギー効果、抗菌効果、消臭効果などがあると言われ、竹パウダーのにおいを嗅いでいたら花粉症の症状が軽くなった、という話も。

ザッと並べただけでも使い道はこのとおり。

・土壌改良材に
・ボカシづくりに
・生ごみのコンポストに
・家畜の飼料に
・お部屋の消臭剤に(乾かして置くだけ)
・ペットのトイレの消臭剤に
・排水溝のヌメリとりに
・そのまま食材に(パンやクッキーに混ぜても◎)
・ぬかどこに(ぬかを混ぜなくてもぬか漬けになる)

夢広がる竹パウダーを早く使って行きたいものだ。



****設置レポート****

天気はあいにくの雨ですが、めでたく竹パウダーの機械が導入されました!


あいにくの雨模様ですが


この部屋に竹パウダーの機械が入ります


搬入のトラックがやってきました!


続々と荷物が運び込まれます


トラックの荷台に載っているのがバンブー機械です


入口に段差があるので運び込むのに苦労しました


一度後ろに戻して


もう一度引き上げます


無事段差を乗り越えました


運び込むのは右側の部屋です。
今度は入念に段差を越える準備をします。


よいこらせー


無事部屋に入りました。
無事本体が入ったのであとは組み立てです


鉄パイプをつけます


このパイプの間に竹が入って、本体に押し込みます


竹を押し込むところ


この穴に竹をセット


ダクト。ここからパウダーが出て来ます




重しのワイヤー


配線。ブレーカーから電源を取ってます


ケーブル類






ひととおり組み上がりました

試運転用の竹が無かったので、ご近所まで切り出しに行きます
向かいの竹林の竹を刈ります


青々とした竹林。白く粉を吹いているのが若い竹だそうです。
竹パウダーにするには、3〜4年の古い竹がむくそうです。
1年目の竹は水分が多いので、パウダーに水が入るそう。


切り出します






持ち帰ります





カットします



端に留め具をセットします

先端を本体にセット



根元を手前にセット


試運転開始!


ごうんごうん削れて行きます。要するに原理は巨大な鉛筆削りと同じです




使い方は簡単です。まず主電源を兼ねたブレーカーを入れる


本体の電源を入れる


本体に電源が入ると赤いランプがつく


竹をセット
先端を本体にセットするときは、なるべく竹の中心が
真ん中にくるように手前の板をしいたりして調整する


根元をセット


このボタンを押すと削り始める


ブレーキボタン。これは竹を押す部分にもついている


竹を押す部分。手前のロックを止めるとスタート。
赤いボタンがブレーキ。


押し込む早さの調整つまみ


受け口にたまる削りかすは粗いので、パウダーとは混ぜずに
これだけ集めてマルチなどに使う


使い終わったら必ず電源を落としてから掃除
のこぎりの刃状の板を差し込んで削りかすを落とす
危ないので必ず電源を落として作業すること


ダクトからこっちにパウダーが流れてくる
適宜溜まったら下のボックスから取り出す


本体の刃を取るための道具。刃が欠けたりしない限りまず使いません


機械を作動するとかなりごうんごうん音が響くので、防音措置などがまだ
必要ですが、とりあえず無事設置が完了しました。



ありがとうございました!あとは竹を削りまくります!